街には引力があると言う。例えば渋谷、新宿、銀座…そういう大きな街だ。とても強い引力により多くの人々が引き寄せられる。
引力と言うのはお酒だけではない。街の魅力がそれを示している。引力が強ければ強いほど人はその街に寄せられていく。
川崎と横浜の間にある町。僕が住むこの町にも町の引力はあった。決してお酒だけではないと言いたいがいろいろな人が地元というわけでも無いのにこの町を訪れ楽しんでいた。
僕が思うにこの町の引力はドンドンと強くなり隣の町まで影響を及ぼすほどの力になっていたと思う。
この町に来ると帰られなくなる。
別に大手の店が参入しているわけではない。地元の店の連携、これが引力を強めていると僕は思う。今飲んでいる店が終わった後に行く店がある。その店が終わった後に行くカラオケがある。すべてこの街で完結している。
そして、この町は単体で生きていける力を実際に持っている。そしてここ数年、引力は力を増し他の街からも人がやってくるようになっている…ように見えた。
これを見ている君もおそらくこの町の引力に引かれてきた1人だ。
この町の引力に引かれて圏内に入ると生きる事は実に容易になる。大きな敵を作らず、たくさんの仲間といろいろな店に足を運ぶ。変な仲間意識を作らず、それでいて知らない人同士が団結する。
この町には多種多様の趣味を持っている人がいる。例えば音楽がその代表的なものだ。
2020年、ある国で産まれた特殊なウィルスによって世界が混乱を記した。この町も例外ではなかった。ただ、まだ引力は残っていた。決して違法ではない。緊急事態宣言により時短営業を強いられたお店はそれに従った。でもみんなまた昔みたいに町の引力が強まると思っていた、そしてそれは緊急事態宣言解除後に再び強まることになった。
だからといって下品な飲み方をしているわけではない。他人を顧みないような遊びをしているわけではない。マスクをして体調に気をつけてこの町の引力に引かれて集まった人々は状況報告をし安定を図る。
2021年始まったばかりであるが世界はやはり新型コロナウィルスを収めることができなかった。それはこの町だけではない。たくさんの引力を持った街に対して時短要請が求められた。
店の存続、そういうのとはまた別の話であるが実際に店が閉まると人が集まれなくなる。引力はドンドンと弱くなり集客力が弱くなる。あくまでも集客力は売り上げと直結するわけではないがその街の活性化に貢献していたのだ。
僕が住むこの街もだいぶ引力が弱くなってしまった。人々が集まり情報交換や近況報告をする場がなくなっていく…。
2021年1月に2回目の緊急事態宣言が発令された。この街の引力はほぼなくなり、逆に隣の街の引力に惹かれるようになってしまう結果になった。これが正しいのかどうかわからない。
僕がこの町に引っ越してきた時、この町は僕にとってあくまでベッドタウンであった。あくまでも寝るためだけの街。しかしその後この町の引力にひかれることになって今に至る。
この町の引力が弱くなっている。おそらくこの町だけではないだろう。人が集まる場所の引力が弱くなっていく。人はもともといた場所に戻っていく。人々は物理的に離れていき論理的に繋がっていく。
それが間違っているかどうかわからない。ただ世の中には1人で生きている人が思いのほか多い。リモートワークが発達していると聞く。人はもはやどこでも働ける時代になっているのかもしれない。
孤独を感じている人も多いのでは無いだろうか?
このエントリーを読んでいるあなたがどこで働いているかは僕は知らない。でも、あなたと会おうと思った時どこの街で会えば良いのだろう?たくさんの引力を失ったこの国の中で僕たちはどうしてい出会うことができるであろうか?
新しい文明開化が来るだろう。
僕は古い人間になる。でもあなたに会いたい。
…ただただ、あなたに会いたい。