『こづかい万歳』の作者である吉川浩二さんのエッセイ漫画に『日本をゆっくり走ってみたよ』と言うものがあります。Kindle Unlimitedで無料で読めたので読んでみたんですよね。
1人で行動(旅行)して、その時々のエピソードを想いをよせている相手について語りかけるような感じのエッセイ漫画となってまして、読んでいて(かなり昔ですが)名波誠さんのパチスロ漫画(『パチスロひとり旅』)を思い出しました。名波さんは家を持たず借金を返す為に日本全国を車で移動。漫画の誌面を使って元カノに状況説明するような感じになってます。
「日本をゆっくり走ってみたよ」。この漫画は勝手に片思いをした人に勝手にプロポーズの条件(バイクで日本一周)を作って行動を起こし、その土地土地の状況を片思いの人に説明する感じになっています。かなり強引な感じが伺えます。ちなみにその人との恋愛経験は無し。
例えば学校や会社に居る異性で何回か話した事がある程度の人に恋愛感情を持つ感じですね。
その想いは古来より普通に“片想い“と言う名前が付いているので問題ないんですが、昨今の世の中だと度が過ぎるとストーカーみたいな感じになる危険性を孕んでますよね。
この物語も一歩間違えると『過度の思い込み』になる可能性もあります。
最初はその人の事を思って(?)風俗とかには行かないように(これまた勝手に)決めていたみたいですが途中からちょくちょく行くようになります。生理現象ですからしょうがないんですけれどこの部分ガサッとカットしても良かったのでは…?
また、(精神的に)強くなりたいと言うテーマがあるのですが結局強く言えずにその場その場で流される事も多数。この人は精神的に強くなれたんだろうか?日本一周しながら昔の仲間に会いに行っただけでは……そんな不安が過ります。
結局、ほぼホテルに泊まらずバイクで野宿すると言うサバイバルな部分は強調されてますが流されたりする場面も多数。でも、いままでいち漫画家だった人がこう言うチャレンジをするのです作者としてはネタの宝庫でしょう。特に野宿メインだったみたいなので主人公に対等に立ち向かう個性的なキャラも多数。それらのサブキャラは普通に読んでると「余計なお節介キャラ」感が否めませんが本人は至って良心でやっているし、それに結局翻弄される主人公……主人公の性格が良くわかる場面がちょくちょく出てきます。
精神的に強くなりたいけどモチベーションやきっかけが欲しい…そうだ!あの人に告白するのを目的にしよう!と言う感じなのだと思います。
ただ漫画を読んでいるだけだとお相手の方もこのチャレンジに期待していて無事成功した暁には(当たり前のように)告白成功!みたいに感じてしまうんですよね。結果は当たり前ですが残念なことになります。これってミスリードだったんですかね?
その後この漫画の主人公(作者)は無事に生涯の伴侶と出会う事になるので良かったのですけどそうじゃなかったら……と言う怖さも感じます。
日本一周の行動原理の目的の想像図がこれですし…。
先に書いたように“片想い“は大切で切ない気持ちですので素晴らしい経験なのですけど漫画家が実体験をベースにしたエッセイ漫画として発表するのはちょっと……と言う気持ちになりました。勿論、後書きを読むと漫画内で出てくる女性に許諾を取っている事と本人と特定出来ない表現にしてある事が明かされているので一安心。(さらにその女性としては吉川さんに全くその気が無かったことも分かります)
体験は実体験だけど登場人物は全員フィクションにすれば良かったのになー。などと思ってしまいました。
ライダー共通の”あるある”キャラが出てきているみたいですし。
僕も長い間片想いしてた時期ありますしそれをWeb日記に書いたりしてましたがちゃんと告白してちゃんとフラれたので新しい恋とかできましたからね。
でも、この人の漫画は嫌いじゃないんです。人を選ぶ絵柄なのですけど僕はこの人の“エッセイ漫画“ではないものは安心して読めるのですが“エッセイ漫画“になると作者の「気が弱いけど頑固(思い込み)な面」があるので少々読んでて別の意味でハラハラしてしまいます。でも、それがこの人の作風の醍醐味の一つなのかも知れませんね。
もし、興味があったら是非ご一読を!共感性羞恥に近いものを感じられるかも知れませんよ。