TBSの番組プロデューサーである藤井健太郎さん。
水曜日のダウンタウンをはじめ、”ぶっとんだ悪意に満ちた”企画を作る人有名ですね。
そんな藤井さんが2024年の暮れに『10年観察』と言う番組を突然放送しました。
これは千原ジュニアさん、有吉弘行さん、ロンブー淳さんと言う3人の芸人を10年間にわたって定期的に観察した結果を放送するというものでした。おそらく予告が出たのは1週間前だったはず。
勿論、10年間ずっとカメラをまわしている訳ではないですが、各々の誕生日だったりクリスマスとかのイベントだったりコロナ禍の過ごし方だったり…3人3様、それぞれの過ごし方を3人で見ながら当時を回顧すると言う番組。藤井さんのことなので、どこかに”悪意”があるのかな?と思ったのですが、しっかりとしたドキュメンタリーになっていました。
これを見ながら思ったのですが、「藤井さんは物理的な時間を大事にするのでは無いか?」と言う事です。
“物理的な時間”とは早送りや巻き戻しが出来ない誰にも平等で流れる時間の事です。
1年365日、1日24時間、1時間60分、1分60秒。
思えば、藤井さんの人気番組に『クイズ・正解は一年後』と言うものがあります。
年始に「今年は芸能人の誰が結婚するか?」とかそう言う「今年起こりそうな出来事」を予想して、年末に答え合わせをすると言うものです。
これも答え合わせには丸一年の年月が必要。
さらに、2024年末の同番組では「桃栗3年柿8年チャンス」みたいな企画もあり、ロンブーの亮さんが実際に柿を育てて収穫された柿の数だけポイントになるというものでした。
そう、これも柿の種を植えて実がなるまで育て上げると言う物理的な手間と期間が必要です。これは確か6年前位に植え始めてやっと実がなりだしたと言う結果だったと思います。
「物理的な時間が経たないと分からない事がある」
藤井さんの企画の柱の一つにこの観点があると思うんです。
例えば、僕が好きなアニメに新世紀エヴァンゲリオンと言う作品があります。この作品はテレビシリーズから始まったのですがちゃんと最終回を作る事が出来ず(予算とか納期とかもあったと思います)、非常に変な形で一旦終わります。が、その後一応の完結編として映画”Air / まごごろを、君に”が公開されました。1998年の事です。これを通称”旧劇”と呼びます。
これも「結局あれはどうなったの?」みたいな謎を沢山残しながら”投げっぱなしジャーマン”のように終わったのですが、一旦ファンとしては「まぁ、そういう事だよな」みたいな感じで納得して幕をとじます。
この謎が多すぎると言う点について公式からの補足情報はほぼ無かったため、熱心なファンは考察を始めます。昨今の考察ブームの火付け役の一つと言っても過言ではありません。
その後、”エヴァンゲリオン新劇場版”として2007年からセルフリメイクが行われました。”序”、”破”と言う感じで公開されたため、舞楽の進め方である”序破急”からきていると思っていたのですが、3作目は”急”では無くまさかの”Q”。そして、最後に本当の終わりとして作成された”シン・エヴァンゲリオン”が公開されたのは実に2021年でした。
エヴァのファンは旧劇(1998)からこのシン・エヴァンゲリオン(2021)が公開されるまでの間の約23年間に渡り、物理的な『エヴァの呪縛』が続いた訳です。
勿論、今では作品は全てあるので全作品イッキ見も出来ると思うのですが、多分それだと「わかりにくっ!」「なんでこんな終わりなの?」みたいな感覚で終わると思います。でも、物理的に24年間『エヴァの呪縛』にとらわれた人々にとっての”シン・エヴァンゲリオン”はまさに卒業式だった思い出があります。
ちょっと横道にそれましたが、どれだけお金を出しても未来を”今すぐに”手に入れる事は出来ません。1年後の今日は1年という物理的な時間が経過しないと訪れないんです。それはどれだけお金を使っても人を使っても無理な世界。
“時間と言う平等な物”
藤井健太郎さんは、まだまだ何かを仕込んでいるのかもしれません。もしかしたら今後、「え?この時代からこの企画始まっていたの?この人がやっていたの?」と言うような企画が出るかも知れません。そしてそれはきっととても価値がある物になるのだな。と思うのでした。