若い頃、童顔だった僕は早く大人みたいになりたくて、”ほうれい線”に憧れた時代がありました。今なら「何を!なんで、ほうれい線なんて敵じゃないか!老化反対!アンチエイジング!」と思いますし、女性などは「なんで?ほうれい線なんて無い方が良いじゃん!」と思うでしょう。
でも、僕は”ある人”が人生の目標で、その人に追いつく為には『ほうれい線』が必要だったんです。
僕は高校に入って本格的に音楽と向き合いました。聞くだけではなく演奏する方ですね。時はバンドブーム、楽器が流行っている時代があったんです。今だとダンスが出来るとかちょっと前だとラップが出来る…とか、そんなものよりももっと大きいムーブメント。サーフィン出来るとかスノボできるとかサッカー上手いみたいな感覚で”楽器弾けるぜ”的な人がバンドを作り、CDを出せる時代がありました。
バブルと言う時代も後押しして、本当に”音楽”と言うものがブームだった時代です。(音楽というのはジャンルですが、ブームでもあります。今、CDが売れないと嘆いているのは、一言で言うと今は音楽がブームでないからです)
僕はこの時代に生きました。そして、友人に教えて貰って僕が心の底から大好きになったバンドは”レピッシュ”といいます。今では知らない人も多いでしょうし、当時のバンドブームを経験をした人でも「あぁ、あのスカのバンド」とか「”パヤパヤ”の一発屋でしょ?」的な扱いのバンドでしたが、音楽業界内では有名なバンドだったと思います。
かっこよく言うと玄人受けする音楽をやっているバンドです。とは言え難しい事なんてひとつも言ってなくて、僕からすればとにかく「カッコイイ!」の一言でした。
そんなバンドのキーボード(&SAX)に”上田現”と言うメンバーが居ました。当時僕はバンドでキーボードをやっていたので、この人が僕の人生の師匠になりました。メンターって言うんですかね?実際に会ってお話しとかはした事なんて全くないんですけれど。
とにかく音楽だけではなく、人間性やファッション全てに影響を受けました。本当にかっこよくて愛されるおっちゃんでした。(メンバーの中で一番の最高齢なのですが、それでも年齢でサバを読んでいると言うお茶目なおっちゃんでした)
ライブとか見てもカッコイイんですよ。かっこよさを追求した挙げ句楽器弾くのを放棄すると言う本末転倒もたまに見られましたが、それすらカッコイイ。
最後は”上田現”って名前すらカッコイイと思えるほどでした。もう信者です。
そんな上田現ですが”ほうれい線”がトレードマークでした。深く刻まれたほうれい線。笑うとそれが一層引き立ちます。
「かっけー、俺もこんな大人になりてぇ」そう思ったものです。
でもね、結局ほうれい線なんて簡単にできないわけであり、かつ老化と共に勝手にできるものでもあります。
僕も30代半ばにさしかかりました。今となってはほうれい線は無い方がいいと思ってます。僕は上田現ではないのだから。
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上田現は若くしてこの世を去ってしまいました。僕はまだ学びたい事が沢山合ったんですけれど、残念です。
でも僕は勝手に、この”上田現イズム”を残していきたいと思うのです。
僕が奇行をとったときや変にロマンティックな口調になった時…。それは”上田現タイム”です。暖かい目で見てやってください。(言い訳)