ユニコーンというバンドがいました。いや、16年たって2009年に再結成したので、ユニコーンというバンドが現在います。バンドブームを駆け抜けたバンドでしたが、まっとうなラブソングなどを量産していたのはアルバムの2枚目までで、後は実験的な音楽をやっていくビートルズみたいなバンドでした。
そのバンドの再結成前の事実上ラストシングルは「すばらしい日々」と言う名前です。カラオケで上司が歌っているのを聴いた人がいるかもしれないし、人によってはリアルタイムな曲でもあると思います。僕にとって迷うこと無く名曲です。でも、それ以上に僕はこの曲に思い入れがあるのです。
この曲は「すばらしい日々」というタイトルとは真逆に離れていく二人を描いた曲です。歌詞の内容から恋愛の曲と思う人が多いと思うのではないでしょうか?
ー 僕らは離ればなれ たまに会っても話題がない いっしょにいたいけれど とにかく時間がたりない
この歌詞から始まるこの曲はいきなり倦怠期のカップルだけれど必死に関係を戻そうと忙しい日々の中頑張っていると思うかも知れないと思います。
ー 人がいないとこに行こう 休みがとれたら
この歌詞にあるように、なんとか時間を作って、仲直りしたいという気持ちが沸いてきます。
このようにこの曲は全体的に非常に歌詞が理解しやすいし、自分に置き換えやすい曲です。
でも、その思いはサビの歌詞で覆られます。
ー すばらしい日々だ 力あふれ すべてを捨てて僕は生きてる
なぜ?力があふれるすばらしい日々なのに、全てを捨てているのでしょうか?
さらに謎は最後のフレーズで余計分からなくなります。
ー 君は僕を忘れるから その頃にはすぐに君に会いに行ける
普通の恋愛感情の曲だと思うと、この歌詞が理解できなくなると思うんです。
でも、往年のユニコーンファンなら、この曲はすぐに理解できていたと思います。僕もその一人です。ユニコーンというのは5人組のバンドです。ただ、再結成前(1993年)、事実上のラストアルバムを出す前にリーダーであるドラムの川西幸一さんが脱退してしまいました。だから、この「すばらしい日々」のドラムは正規のユニコーンのメンバーではないのです。
ユニコーンというバンドはキーボード(後に加入)を除いたメンバーはみんな同じ広島出身です。同じ広島で同じライブハウスで音楽を奏でた後、メンバーでアマチュアバンドを組んで、そのままデビューした形になります。音楽性以前の問題で友情などが沸いていたんだと思うのです。
特にギターボーカルの奥田民生はドラムのメンバー川西幸一を慕っていたと聞きます。しかし、バンド終期、すでに川西さんはユニコーンに新しさ(バンドっぽさ?)を感じていなかった。そして自らのバンドを去ったのです。アルバム発売を待たずして。
その思いを奥田民生が歌った曲がこの「すばらしい日々」だと言われています。まさに、この曲の歌詞をユニコーンの奥田民生と川西幸一の関係に当てはめると全く違和感を感じないどころか、余計に歌詞の内容が理解できるのです。これがこの曲のからくり。
ー 君は僕を忘れるから その頃にはすぐに君に会いに行ける
これは奥田民生が「時が流れ、川西さんがユニコーン時代のぎすぎすしていたメンバー関係を忘れて一人で進んでいけるようになれば、その時はまた新しい気持ちで会いに行ける」と言う意味がファンの中での見解となっています。
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僕もこの曲が好きでした。歌詞の内容は「バンドの事なんだろうなー」と思いながら歌っていたんですけれど、どうにも全ての歌詞が自分に刺さるんですよ。ただ、「君は僕を忘れるから その頃にはすぐに君に会いに行ける」の部分は奥田民生の気持ちで歌っていました。
その後、僕は酒癖の悪さが原因で友達を失ってしまいます。えぇ、親友です。これが原因を覚えていないと言うのだから、僕の当時の酒癖の悪さときたら最悪です。殴る蹴るの喧嘩では無いので、おそらく酩酊状態になった僕が、友達に決定的な酷い言葉を言ってしまったのだと思います。
そして、僕はその友達と疎遠になってしまいました。僕から連絡を取ろうとしても、きっと断られると思います。その友達の中で、僕と言う(いやな)存在を完全に忘れた頃に、やっと許して貰える可能性が出てくるのだろうと思うんです。
今となっては、この「君は僕を忘れるから その頃にはすぐに君に会いに行ける」の歌詞が自分の胸に刺さります。
僕は、”君が許してくれるまで=君が僕の存在を完全に忘れるまで”、きっと会うことは出来ないのだろう、と。
今の僕はすばらしい日々を送っています。仕事は充実していますが、その日々の忙しさに追われながら、全てを捨てて、僕はサラリーを貰って生きている。
ユニコーンが再結成して、ライブでオリジナルメンバーの5人でこの曲を歌うまで、16年の月日を経ています。僕も、僕だけでは無く、お互いにいい意味で大人になって、許す気持ちや寛大な気持ちが出来て、再会する事ができる時まで、何年でも待つつもりです。
無理矢理謝っても、すぐには相手にとっては気持ちは氷解しないと思います。そんなに都合が良いものだとは自分でも思っていません。とにかく、氷解して忘れるまで。それは友達にしかわからないのです。
(余談ですが、僕なりのユニコーンの解散の理由は阿部(キーボード)の過剰なプロデュースワークにあると思っています。ユニコーンはドキュメンタリーとかメイキングビデオを数多く残しているんですが、それを見てもそうとしか思えない部分が散見されます。但し、再結成後もその立ち位置はメイキングを見る限り変わってません、きっと周りのメンバーがそれだけ大人にそして寛大になったのだと思っています。そして、それが今、全員の思いでいい方向に進んでいるのではないだろうか?と思うのです。)