髭男爵と言うお笑い芸人がいます。貴族の格好をして「〜やないかーい!」とか「ルネッサーンス!」といいながら乾杯したりしている芸人です。
その中の太っている方、山田ルイ53世が僕は個人的に大好きです。テレビで見る機会は一気になくなってしまいましたが地道に続けているPodcastである「ルネッサンスラジオ」は毎週欠かさず聴いています。世間の妬み嫉みにまみれた社会不適業者ラジオです。
で、その中で「なんの因果か新潮45で連載を持つことになった」と言っており兼ねてから噂されている文才を見る事が出来るなと思っていたんですよ。どうも毎月一発屋芸人にフォーカスを当ててその人生を綴ると言うもので、立ち読みしようと思ったのですが少々硬い雑誌なのでやめておきました。「ちゃんと評価されてれば纏めて一冊に文庫化されるだろう」位の感覚だったんですよ。
それから1年。ついに文庫化されました。その名も「一発屋芸人列伝」なんでも、異例の雑誌ジャーナリズム賞作品賞を受賞との事。髭男爵と言う芸人がジャーナリズム賞を受賞するって言うのが凄いですよね。
さっそく買ったのですが一気読みしたかったので時間が取れずにいました。そして週末。僕は川崎にウォーキングするのが趣味なのですが異常気象と言われている今夏、ウォーキングは自殺行為と判断し、家で一気読みしました。
いやぁ、面白かったです。色々な書評で「素晴らしい文才」と書かれていましたがまさに物凄い文才です。芸人の文章ではないです。ルポライターと言っても過言ではないです。ただ、職業お笑い芸人なので、比喩・形容の仕方が芸人らしい所があるんですけれどそれも含めて恐ろしい文才です。
紹介されている”一発屋”芸人は下記の通りです。
- レイザーラモンHG: 一発屋を変えた男
- コウメ太夫:“出来ない”から面白い
- テツ and トモ:この違和感なんでだろう
- ジョイマン:「ここにいるよ」
- ムーディ勝山と天津・木村:バスジャック事件
- 波田陽区:一発屋故郷へ帰る
- ハローケイスケ:不遇の“0.5″発屋
- とにかく明るい安村:裸の再スタート
- キンタロー。:女一発屋
- 髭男爵:落ちこぼれのルネッサンス
中には「え?このひと一発当てたっけ?」って人もおりますが、そう言う芸人もそのようにちゃんと分析されておりますのでご安心を。
「それでも、人生は続く」と書かれた帯はスバリ”Life goes on”から取ったのだと思うんですけれど、その名の通り、一発屋芸人派はどのように売れて、今の人生をどのようにしているのか?と言う本であり、「一発屋の頃はこんなに売れて素晴らしかった!」と過去を振り返るのでは無く、一発が過ぎ去った今、彼らはどのように芸能界で生きているのか?と言う「今」を切り取った本です。決して回顧録ではありません。
やっぱり芸人は面白い!
一発屋芸人が同じ一発屋芸人の話を書く、ある程度一発を当てたからわかる面もあるでしょうし、読んでいてメタな感じを受ける部分もありました。
著者:山田ルイ53世さん、昭和のプロレスラーではありません。
ただ、この文才を認められて売れっ子になってしまい、お金にならないルネッサンスラジオを辞めてしまうか…少々心配ではあります。社会不適合にはまだまだ、あのラジオが必要なのですから…