ホリエモンさんの『多動力』って本の中に“寿司屋の修行なんて意味がない”的な煽り文句があります。
内容を読んでいくと、情報が不足していた昔は有名店で修業して目利きなどの力をつけなければいけなかったけれど今はマニュアル化されてネットで調べれば分かる。だから、修行とかしないで、そのマニュアルをベースにとっとと店を開業したほうが合理的!(余談ですが、この本では取り扱いにくかった牛の部位についても、知識を独占しないで、マニュアル化した人の事も取り上げています)
僕にとって、このホリエモンの煽りは「半分当たってて、半分は今の日本では厳しい」と思っております。
半分当たっていると言う点は「洗い場xx年」とか言って修行しても最初の何年も皿洗いしかさせてもらえず、5年とか経ってやっと包丁を握らせてくれるって言う奴ですね。別にプロの皿洗いを目指すわけでは無いのでこの点に関しては同意です。何年やっても料理の腕は上がらない。
(ちなみに言うと、フランス料理とかも同じ風潮ありますよね。ちなみにフランス料理とかはお客様が何をどのように残したか?今日のソースは評判がよかったか?などを食器を下げるときに勉強できたりします)
半分はのれん分けですね。
「有名店で何年間も板場に居た職人が独立した」ってなればその店は繁盛するでしょう。口コミも沢山伝搬すると思います。”お墨付き”とかそんな奴です。
一流料理人とかでも「xxのホテルの総料理長をやっていた」とかそういう箔があればその店は繁盛すると思います。(「東急インの総料理長をやっていた!」ではちょいとしょぼい…そう言う意味ではどの店で働くかも重要な部分になります)
逆にマニュアルで独学で開店しても良いですけれど売り文句が無いので立地や客層に恵まれないとどれだけ実力があっても運転資金が尽きてしまうと思います。
ちなみに、ソフトウェアエンジニアでも「アクセンチュアに数年間在籍して…」とか言うと一気に箔が付きます。(100億のプロジェクトのマネージャーをやっていたとか)
こういう部分でのマニュアル(本屋に売っている技術書やインターネット)だけで知識を付けてもいきなり現場で高付加は得られないと思います。
(僕は高度情報処理とPMBOKの資格を持っています!って言っても現場経験無いと役に立ちません。海外だとそれよりもGitHubのコミット実績の方が評価されます)
ホリエモンの言うとおり修行しないで、マニュアルや独学でやるのには職人技だけでは無くて営業能力(リサーチ能力)の方が大事なのかな?って思いますよ。
特に立地。顧客ニーズがあるか?どの位の年齢層の人が求めているか?リピーターになってもらう為にはどのようなサービスをすれば良いか?…等々。
勿論、それで成功するケースもあります。
でも、ホリエモンの言葉を鵜呑みにして、「寿司屋の修行なんて意味が無いぜ!俺はマニュアルに従って仕入れて独立だ!」なんて人がテナント代をケチって、お客さんが来ないような土地に店を建てて、地域密着もしないで高級店を名乗るのは無理なんです。
寿司のケースを取りますと、寿司と言う分野は2極化が著しいです。
・高級店
・回転寿司
ですね。
回転寿司レベルに毛が生えた程度の店だと回転寿司にすぐに淘汰されると思います。(その点、すしざんまいは上手くやってると思います)
高級店も、
・みんなが知る高級店
・地元密着の知る人ぞ知る高級店
がありますね。
前者はすきやばし次郎、久兵衛とかですね、後者は麻布とかの雑居ビルの中を改装してひっそりと(あまり広告せずに)やっているパターンです(寿司屋密集地帯なので、結構な勝負になると思います)。
自分がやりたい寿司屋はどういう路線なのか?対象客の年齢層はどのくらいか?客単価は幾らに設定するか?なんてのをきちんとライバル店と比較(ベンチマーキング)すれば成功するかもしれません。
一旦、固定客が付けば、その売り上げからより高級なネタを仕入れてレベルアップする事も可能ですよね。
余談ですが、美容院の業界もそう言うの多いみたいです。さすがに高級美容院ってのは無いですけれどチェーン店とかの美容院で数年修行して、ある程度自分を指名してくれるお客を作っておいて独立ってのもあります。
矢向にもakaakaって言う僕が良く行く美容院がありますが、そのパターンで地元密着型でいつも繁盛しています。
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それにしても、ホリエモンさんの本ってホリエモンさんの本意をきちんと汲み取れば素晴らしい本だと思います。1項目1項目について、きちんと時間を割いて講演とかしてくれれば良いと思いますが、「面倒くさい。本を読んで理解できない奴はバカ」と言いそうなのでそういうのはないでしょうね。
ただ、本意を汲み取らず(理解できず)に、「目から鱗!」ってなる人が増えるのをちょいと恐れているだけです。ちゃんと理解(考えながら読む)するのがホリエモンさんの本の読み方だと思いますよ。
ホリエモンさんの本全般に言えるのは「疑いながら読め」って感じですね。
あ、その中では『ゼロ』って言う作品が僕は一番好きで、この本は疑わずに読んでも良いと思います。
では。