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嘘とビールと友と胃袋

ビールを飲んでいる。外で飲む時は銘柄は気にしないが、家で飲む時はアサヒスーパードライである。辛いと言う人も多いかもしれないが、喉越しが好きなので好んで飲んでいる。

友人ってなんだろう?心を許せる人か、心の中の悩みを相談できる相手だろうか?…そこまで行くと”親友”にクラスアップする。

僕が住んでいる矢向と言う街にも友人はいる。引っ越してきた当初はただの”寝る場所”であったこの街が今では好きだ。狂おしいほど好きだ。それは友人がいるからと言うのもある。ただ、この場合の”友人”は簡単に言うと「仲良く飲む」と言う種別の人だ。行きつけの飲み屋のマスターと仲良くなる、常連客同士で友情関係が生まれる。
ただ、それらの友人は飲みの場でのテンポラリーな友人であり、休日の店が空いていない昼とかに会う事はほとんどなかった。

そんな中、休みの人でも会って話せる友人は何人かいた。自称暴力団の裏を知っておりスカウトの声が絶えないと言う人。反社会の人は金払いが良いイメージが多かったが、彼はいつも金欠だった。彼曰く「そちらの業界には行きたくないけれどコネを使って仕事をおこしたい」との事。
彼の話の相談に何回乗っただろうか?1万円2万円を貸してくれと言うお金の話から、知人がイタリアンの店を開くから給料が増える、AVの雇われ社長を任せらられる話がある。いずれ僕にその席を譲りたい、と。

彼の話がいわゆる”ふかし”であることには半分気がついていた。彼の壮大なエピソードの割には常に金欠なのである。
もし僕がその立場であればどれだけでもお金を引っ張れる気がしたからだ。

彼の話は常に先走りをして、「あんまり先走りするな」と指摘していたけれど結局それで失敗していた。今では楽しい嘘を楽しませてもらった。と言うものである。

ある日、彼はこの街から突然姿を消した。僕だけではなく方々で”ふかし”ていたらしく行く飲み屋飲み屋で「あいつの消息知らないか?」と色々な人から聞かれた。知らないものはどうしようもないので知らないと言うと僕を含めかなりの被害者がいたみたいだ。

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反社会的な言い方をすると、彼は“飛んだ”のだ。
今は何をやっているのだろうか?また方々で”ふかし”ているのだろうか?
そう言う生き方もあるだろうが、僕には出来ない。

ただ、レンタカーを借りて鎌倉まで行ったり、ドンキとか川崎競馬場に散歩に行ったり掛け替えのない友人ではあった。嘘を除いて。


お酒の力は時に友情を深め、時に嫌悪感を生む。
僕は行きつけのバーによく行く。そりゃー自分で”行きつけ”なんて言っているからメインはそこだ。
バーのマスターとも仲がよく他のお客様とも仲良くやっている(つもりである)

ただ時間が深くなってくると、喧嘩までは行かないが意見の相違が出てくる事もある。普段なら僕が折れて”なぁなぁ”で済ませることがほとんどだ。
もしくは、お先に会計をして店を出ることだってある。試合放棄。さっきまで飲んでいた酒の味は一気に不味くなるがまぁ仲が悪くなるよりはその程度で済んだほうが良い。

この店では宗教・野球・政治の話はしない。サラリーマンなら心得ている喧嘩になりそうなワードベスト3である。
でも、最近見た映画とか食べ物の美味しさ・レシピなどで、俗に言う”知ったかぶり”を披露する人がいるのも事実。「え?そうなんですか?知らなかった」を言えない人たちだ。僕もなるべくそうならないようにしているけれど、お酒が入れば知ったかぶりには、なる。

ただ、この店の「知ったかぶり」は「そんな事も知らないの?」ではないのが救いだ。聞けば教えてくれるし上手くいけばボロも出してくれる。もちろん酒は自分を映す鏡なので、僕がボロを出す事もしばしばだ。

人を幸せにする知ったかぶりや嘘は大歓迎だ。夢をくれる。酒がうまくなる、大好きなビールが進む。

ただ、人を不幸にしたり陥れたりする発言はやはりきつい。気が付かずに僕がそのような発言をしているのかもしれない。そう言う時はマスターが交通整理をしてくれる。

人間、気が立って「ムキー」となる前に気持ちを心に押し込める時がある。ストレスってやつだ。
ストレスはたまると身体のどこかに異常をきたすことがある。頭痛は二日酔いとして、部分的な蕁麻疹が出たり、髪の毛が抜けたり、肌の質が悪くなったり…まぁ一番多いのは胃痛であろう。

僕は会社に入ってからの10年弱は本当に胃が弱かった。毎日胃薬を飲んでいた。でも、健康診断では胃は綺麗で潰瘍の後もポリープもなかった。
人間は友の嘘や友の言動によって傷つく事がある。でも、四半世紀社会人生活をしていて僕は胃にストレスを感じないように身体の構造が変わってきた。

本末転倒と言われるかもしれないけれど、酒のんでストレス発散できるのである。
酒の場で雰囲気が悪くなった後、翌日の酒でストレス発散できるのである。

おかげで、過度のストレスを感じる事はなくなった。
ただ、それの中には自分で自分に嘘をついている時も含まれる。
自己暗示ではないけれど、本当の自分に、他の自分が「まぁまぁ」と慰めてくれるのである。

アルコール中毒だからだろうか?だとしたら、お酒が飲めない人はどうしているのだろう?そう言う場面に自分が遭遇するたびにいつも思ってしまう。食べればストレス発散できる人もいるだろうし、買い物する事でストレス発散している人もいるだろう。

でも、僕は友の嘘をビールで胃に流し込んで、時には笑い、時には鬱屈な感情を残しているのである。それも翌日のビールで洗い流してトイレでジャーだ。

人を騙す嘘はつきたくない。でも、つかざるを得ない場面だってある。
ただ、確実に自分が自分についた嘘(ある意味自己催眠とでも言うのだろうか?)は身体には良くない。

それでも、生きるために嘘をつくか、自分をぶっちゃけるか…そう言う場面が人生を過ごしていて何回かは遭遇する事がある。
そんな時、”友”と”親友”が分かれてくるんだろうな、なんて深夜にそう思った。”親友は”、ズケズケと本音を言ってくれるから、辛いかもしれないけれど、やはり助かる。

2020.4.10 – AM1:00 自宅にて

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