タモリ倶楽部が終わった。2023年3月31日、第1939回目。
最終回も特段特別な演出はしなかった。
が、個人的には非常に面白かった回となった。
なぜか?
最終回のテーマは「タモリ流の料理を本人が実際に再現する」と言うもの。
ネットニュースで誤った情報が勝手に流れて色々な人が迷惑を被っている。タモリも「タモリ流レシピが嘘ばかりで困ってる」と言う入り口から入って、それじゃあ!と実際にタモリ本人が料理を作るという企画。
劇団ひとりが回し、爆笑問題・田中、市川紗椰が横につく形で番組は続く。
今回検証した料理は以下の2品
・タモリ流生姜焼き
・タモリ流ピーマンの醤油煮。
ただ、タモリ自身その料理を作るのは久しぶりであり、タモリとしては基本的に(タモリが思う)目分量で良いと言うのが本心。
そもそも一人前の量も番組上では曖昧に進んでいく。いかにもタモリらしい。
ただ、今回はそれを劇団ひとりがいちいち正し、公式に測量する(田中が書記)というテイで番組は流れていく。
タモリ自身、本来のテキトー精神があるので途中で訂正が繰り返される。だがそれが面白い。市川紗椰としては「いやだなぁ、この面倒なじいさん」みたいな表情もしており実に面白い。ただ料理はしっかりと美味しい。
なんかそれを観ながら”文化の継承”みたいなものを感じた。
“文化の継承”って基本的に『目で見て盗む』ものであり、別に教えを乞うものでは無いと個人的には思っている。
どれだけ教える気があっても、教わる気がなければ全くの無意味である。
なので、本当に学びたい(伝えたい)事を劇団ひとりがデータ化していく。
そういう正確な数字とかってタモリ自身は嫌いなんだろうとおもう。でも「ごま油が無いのならこの料理は作るな」とか言い切るほどの『確固たるポイント』は存在する。
余談だがYoutubeで有名な料理研究家が自身の元にくるクレームに対して「頼むからレシピ通りに作ってください」と懇願しているのを思い出した。「無いから入れない」とか「無いので代替品で」と言う感じでレシピを守らず料理を作られてしまうと当然味は全然変わってきてしまうからだ。そのような料理方法で「美味しくなかった」と言われても返答のしようもない。
これはラジオの切り抜きを文字起こししたニュースを見て「けしからん!」と勝手に怒る人たちが驚くほど多いんだなと言う感覚にも似ている。
ネットニュースにはフェイクニュースが数多く並ぶ。チェックなどを一切行わず想像で記事を書くライターは思うより多くいるらしい。
それらをねじ伏せるように「これが俺の作り方だ!」と紹介したのは実に『最終回』っぽく感じた。
もちろん、タモリにそんな意図は微塵もなかったと思う。邪推って奴だ。
(予想以上に長引いてしまい)時間の関係で3品の予定が2品になってしまったそうだが、できれば『タモリ流カレー』も見てみたかった。
タモリがお酒を飲みながらダラダラ料理をして客人に振る舞う。昔のタモリ倶楽部にはタモリ自身が即興で料理を作る回が多くあった。即興はタモリが最も得意とする分野なのではなかろうか?
十分な御大だが、それでも悪い噂は少なかったと思う。去り際もカッコ良い。多分でしゃばり過ぎなかったのが良かったんだと思う。九州のただのサラリーマンがジャズマンに見つかって上京し芸能界入りする。数奇な運命を辿った男、森田一義。
とにかくお疲れ様でした。
最後に表示された帯に「sophisticate」と言う文字があって納得。別に最終回だからつけたわけではい。見逃していただけ。
ちなみに「趣味、考え、態度などが都会的に洗練されていること」と言う意味である。タモリとはそう言う人だったのだろうな、きっと。