プロローグ(ラジオネーム:梯子ダルマ)
お父ちゃん 兄ちゃん 聞いてほしいことがあるんだ
初メールで恥ずかしながら緊張しているよ
今悩んでることがあってね、笑わないで聞いてほしい
知ってるかな?
僕らがどんなに目を凝らし、注意深く観察しても
すっぴんのトランプマンを見つけ出すことはできないんだ
学校の先生、バスの運転手、道ですれ違ったサラリーマン
すべての男、いや、もしかしたら女だって
本当はトランプマンなのかもしれない
僕は毎日、そしらぬ顔で我ら人間になりすまし
日本社会に潜むトランプマンに怯えている
この脅威に目を背けることはできない
我々の生活圏内にウイルスが紛れ込んでいるのだ
それは由々しき事態である
国民の安寧を脅かすこの蛆虫は増殖を続け、我々の調査によると
既に世界で8000人に一人がトランプマン。5000人に一人がトランプマン予備軍であることがわかっている。
完全平和への第1歩として全人類が隔離と駆逐の徹底を目指す必要があるのだ
立ち上がれ我々がこの手でこの力で戦うんだ
そう、このハンドパワーで……
さあ、我らがミスターマリックに続け
ハンドパワーが世界を救う
トランプマンを混絶するんだ
本当の魔術を見せてやろう
最後に一つ言わせてほしい
「平和の足音 来てます」
環境(ラジオネーム:梯子ダルマ)
お父ちゃん 兄ちゃん 聞いてほしいことがあるんだ
今悩んでることがあってね 笑わずに聞いてほしい
知ってるかな?
僕らがどんなに環境問題に気を配り資源を大切にしても世界から紙が無くなることはないんだよ。
『ふじいあきら』が口から永遠に紙製のトランプを生産してるからね。
彼は今も長野県の山奥で椅子に身体を縛りつけられながら我々の監視下のもと昼夜、口からトランプを吐き出し続けている。
我々はそのトランプを再加工することでこの国の紙資源のほとんどをまかなっている
システムとして聞こえはいいかもしれないが実際のところこれほどまでの資源不足の状況は想定外なんだ
こうなったのも各地で木々を切り倒すトランプマンを野放しにしてきた我々の失態である。
1997年。
増殖を続けるトランプマンの抹殺に乗り出した人類は
誰一人として第1次トランプマン駆逐作戦の成功を疑わなかった
しかし実際は生き延びた数人のトランプマンが
地下で増殖を続けその戦力を拡大し続けたんだ
我々の調査によると
奴らは真夜中埼玉市のマンホールから少しずつ地上へトランプマンを解き放ちその活動領域を広げてきた
ー遅すぎたんだー
現在ではすでに世界で30人に1人がトランプマン、5人に1人がトランプマン予備軍になってしまったのだ
我々が司令官ミスターマリックも最近口数が減り顔が白くなってきている
もうおしまいだ……
私は最後の望みをかけて
1990年の6月『なるほど・ザ・ワールド』にてデビューを果たしたオリジナルトランプマンの暗殺を目指し
過去へ我々が改造したトランプマントランプマンT800を送り込むことにする
歴史を変えてやるんだ
いつか『ふじいあきら』の寿命が尽きるまで
やがて訪れる審判の日を
阻止しなければならない
最後に1つ言わせてほしい
「平和な世界へ I’ll be back」
力(ラジオネーム:梯子ダルマ)
お父ちゃん 兄ちゃん トランプマン 聞いて欲しい事があるんだ
まだ3回目のメールで恥ずかしながら緊張しているよ
今悩んでることがあってね 笑わずに聞いてほしい
知ってるかな?
トランプマンの増職はとどまることを知らず世界の大部分はトランプマンウイルスにすでに感染してしまった
もうこの事態を知らないのは一部の呑気な日本人だけなんだ
トランプマンの軍隊はすでにプリンセス天功、セロ、マギー司郎を抹殺
現在は九州を逃げ回るナポレオンズの2人を血眼になって探している
完全征服も時間の問題だ。
ところで……
かくいう僕も
ついこの間トランプマンの仲間入りを果たしたんだ。
最高の気分だよ
声と引き換えに強力な魔力を手に入れた
以前までの僕は馬鹿だったよ。
世界を救ってくれると思っていたミスターマリックがいかに邪悪な存在なのか今でははっきりと分かる。
マリック軍の動きに勘づいた我々は
過去へ液体金属型トランプマントランプマンT1000を送り込みオリジナルトランプマン暗殺を阻止した。
奴らのまぬけなハンドパワー作戦は失敗したんだ。
未来は変わらない
決して我々トランプマンは滅びない
必ず奴らの中枢を、紙製トランプマンを生産し続ける『ふじいあきら』を抹殺する。
お父ちゃん
兄ちゃん
こっちにおいでよ
一緒にトランプマンになろう?
楽しい世界が待ってるよ
今日のラジオ終わり帰り道に20人のトランプマンが迎えに行くからね
待っててね
さあ
最後の最後にひとつだけ言わせてほしい
「てじな〜にゃ」
救世主(神奈川県ラジオネーム:梯子ダルマ)
お父ちゃん 兄ちゃん 聞いてほしいことがあるんだ
もう何回目のメールかな?
相変わらず恥ずかしながら緊張しているよ
今 伝えたいことがあってね 笑わずに聞いてほしい
知ってるかな?
2013年 今
世界は何も変わることなく人類を平和な日々を過ごしている
何も知らずにね……
現在地下では8割の戦力を失ったトランプマンが回復のために息を潜めているんだ
全人類の支配へあと一歩のところまで登り詰めた彼らは再び地下へと追放された
2013年6月26日
ついに私たちのエネルギー源である『ふじいあきら』を爆殺したトランプマンだったが
そんな世界制服の目前、残された人類に救世主が現れたんだ
突然姿を現した救世主
マッドサイエンティストの『米村でんじろう』
トランプマンウイルス感染者たちを次々と手作りの強力な空気砲で撃破した
今では人類のほとんどが『でんじろう』先生から支給された空気砲を使ってアクティビティー感覚でトランプマン狩りを楽しんでいる
形勢は完全に逆転したんだ
お父ちゃん兄ちゃん
こっちにおいでよ
一緒にトランプマンを狩ろう
楽しい世界が待ってるよ。
どうしてこんな簡単なことに気づかなかったんだろうね?
魔術と戦う唯一の方法は魔術じゃない
科学なのさ
さあ、我らが『でんじろう』に続け
ミスターマリックはもう当てにならない
今度こそトランプマンを根絶やしにするんだ
科学の底力を見せてやろう
最後に一つ言わせてほしい
「出たとこ勝負で決めるのも 意外と悪くない」
(米村でんじろう名言集より)
独白(ラジオネーム:梯子ダルマ)
お父ちゃん 兄ちゃん 聞いてほしいことがあるんだ
こんばんはトランプマンです
初めてのメールで恥ずかしながら緊張しております
本日は今大人気のこのアルコアンドピースのオールナイトニッポン0の電波をお借りして
全世界の皆様への謝罪をさせていただきたくメールを送りした次第です
我々トランプマンは木々を切り倒したり
九州でナポレオンズを追いかけ回したりなど
数々の行動によって皆様にご迷惑をおかけしました。
当時はただ”『ふじいあきら』を抹殺する”
その使命感だけが我々を突き動かしていたのです。
しかし、
心を入れ替えた我々は今ではこの増大した勢力を有効利用して
世界平和に貢献したいと思っています。
そんなところに奴が現れました。
マッドサイエンティスト『米村でんじろう』は
我々の意志を無視し次々と仲間を手作りの空気砲で撃破したのです
レジャーとして流行したトランプマン狩りは世界的な広がりを見せ
今では若者が学歴でなく倒したトランプマンの数を競うようになりました
個人の運動能力の差はトランプマン格差社会を生み筋肉だけが取り柄の馬鹿どもが地位を得る
そんな国の構造が出来上がってしまったのです。
現在の日本の総理大臣 安倍晋三は今までに957体のトランプマンを倒したことがあると言います
トランプマン討伐数が人間の価値を決めるこんな世の中を我々は変えなくてはなりません
皆さん一度我々トランプマンの立場に立って
世界の今を見つめ直してみてくれないでしょうか?
お願いします
最後に一つ言わせてください
「正義って何ですか?」
小市民(ラジオネーム:体脂肪率8%)
お父ちゃん 兄ちゃん 聞いてほしいことがあるんだ
はじめましてどうも小市民です
前回、トランプマン側からの意見を聞き心を打たれました
確かにこれまでの”トランプマンの討伐数こそ正義”という風調は苦手でした。
……ですがそれはトランプマンを思ってのことではありません。
ただただ弱くて狩る事ができなかったからです
弱くて ださくてしょうもない小市民だったんです。
だからこそマッドサイエンティスト『でんじろう』の考え出した発明の数々は僕に光を与えました
“手軽にトランプマンをやれる”
これほど嬉しいことはありません。
それ以降というものちぎっては投げちぎっては投げのトランプマン狩り
充実していた。
満足していた。
生活に張りができた。
でも、トランプマン側の話を聞いて思ったんです
『間違えだった』と。
本当に申し訳ないことをしたと思います。
しかし、どんなに詫びても僕が滅却したトランプマンは戻りません
なのでせめて自分の命で食い改めよう。そう思いました。
ですが、ある時ある音楽が流れてきました
『YAZAWA』
僕は思いました、ロケンロー。
「ロックは世界を救える」と…
覚醒(東京都ラジオネーム:体脂肪率8%)
お父ちゃん 兄ちゃん 聞いてほしいことがあるんだ
どうもこんばんは『米村でんじろう』です
周りからはマッドサイエンティストと呼ばれることもしばしばありました
昔はガリベンと罵られましたし、何事も順調ではありませんでした
だが、俺は生まれ変わった。
日に30時間の鍛練という矛盾を乗り越え、ステロイドの過剰投与を乗り越え、
俺は生まれ変わった。
『ネオ・デンジロウ』に。
素手でトランプマンを引きちぎり、
蹴りでトランプマンをきりさき、
頭突きでトランプマンをくだいた。
無敵、最強、無敗、頭脳明晰
俺は生物を超越したのだ
さあ行くぞ、皆のもの!
ペンは剣より強しだと?
そんなタワごとに惑わされるな!
現実を見ろ
支配されるな
支配しろ
デンジロー印の武器を取れ
こぶしを握れ
歯をくいしばれ
目を見張れ
相手を人と思うな
ゴミと思え
おいトランプマン!
待っていろ、すぐに絶滅させてやる
怯えて眠れ。
「お前らに明日はない」
事実と予言(北海道ラジオネーム:草刈民代(本物))
お父ちゃん 兄ちゃん 聞いてほしいことがあるんだ
いやあ、二人とも やっと会えたね
僕だよ……『ふじいあきら』だよ。
おや、二人ともなぜそんな顔をするんだい?
ああ、そうか二人とも僕がとっくの昔に死んだと思っていたのに…か。
……じゃあ少し昔話をしよう
以前に地球の資源が枯渇し
その救済策として僕が口からトランプを排出することで資源をまかなうという話を聞いたことがあっただろう?
僕はその時は本当に嬉しかったんだ。
だって、口からトランプを吐き出すしか脳のない三流マジシャンが世界を救うんだよ
大変な名誉じゃないか!
だが現実は甘くなかった。
なんせ地球の資源を僕一人で生産するんだよ、元から無理がある計画だったんだ
僕が少しでも休ませてくれと言ったら奴らは決まって
「君が休んでいる一分の間に 世界では千人の人が亡くなるんだよ 君はそれでも休むのかい?」
と言いやがる。
やがて僕の心は疲弊しトランプを排出するだけのデク人形になり下がった頃、トランプマンが現れた。
僕は殺される恐怖よりもこれでこの地獄から解放されるという安堵感の方が強かった
……だがトランプマンは僕を殺さなかった
それどころか僕の力を貸してくれと懇願してきたのだ
その時僕は確信したんだよ
“正義はトランプマン側にある”と。
そして僕は表向きトランプマンに殺されたということにして地下に潜った
やがて来る戦に備えて……
今俺の目の前には培養カプセルに入った5万体のトランプマンがいる
一体一体が『でんじろう』に駆逐されたトランプマンよりも遥かに強力なパワーを持つトランプマン軍団だ
その日は近いぞ
惰眠を貪る愚民共よ心して待つがいい
我々が正義の名のもとに堕落しきった世界に審判を下す
止めるものなら止めてみよ
時は近い
“血塗られた服を見に纏い獣をしたがえし老人が無垢なる魂の前に現れる時”
その時我々の進撃が開始される時だ
それまで つかの間の安息の日々を楽しむがいい
誘惑(ラジオネーム:イエローサブマリン)
お父ちゃん 兄ちゃん 聞いてほしいことがあるんだ
どうも山上兄弟です
世界最年少イリュージョニストとして認定を受けて早11年
僕、兄の佳之介は19歳
弟、暁之進が17歳となりました。
今回このような手紙を送ったのにはわけがあります。
あれは9歳の暑い夏の日のことでした
私たちが札幌の営業終わりスタッフたちと一緒に夜のすすきので豪遊しているとある男が私たちに近づいてこう言いました
「君たち 俺と一緒に世界を手に入れないか」
それが私たちとマッドサイエンティスト米村の出会いでした。
私たちはミスター米村に共感し3人で組織を立ち上げました
しかし、私たちが世界征服の準備をしていると奴らが姿を荒らしました
そう……トランプマンです。
トランプマンが大量発生し私たちが水面下で準備をしている間にトランプマンは世界征服を始めたのです。
まずトランプマンを止めることが先決だと考えた私たちはトランプマン討伐のための所謂”米村印の武器”を一般市民に提供しトランプマンを一般市民に討伐させた。
ミスター米村は日本をトランプマンの恐怖から作ったということで国民栄誉賞を受賞。
ミスター米村は一躍時の人となったのです
そしてトランプマンが少なくなってきたところで私たちは本来の目的である世界征服を行おうとした……
その時である。
『ふじいあきら』が実は生きていたという情報が入ってきた……
『ふじいあきら』は数万のトランプマンを地下施設で増殖させ
反撃する機会を虎視眈々と伺っていたというのだ
もう私たちは手段を選ばないこうなったら米村印の武器の”隠れた機能”を発動するしかないようだ
あの武器には所持している人間の体を侵食できる機能が隠されている。
この機能を使い全国にいるおよそ一千万人の武器所持者を目覚めさせる時が来たようだ
待ってろトランプマン
そして『ふじいあきら』。
今にお前らを駆逐し世界を支配してやる
愚かな人間どもよ、
腹をくくれ
前を向け
膝まづけ
現実を見ろ
そこに俺たちの答えがある
What’s up?
What’s up?
それでは洗脳回避する魔法の言葉を言わせてもらおう
さあ皆さん、ご一緒にご唱和ください
いきます。
「てじな〜にゃ」
正義(神奈川県ラジオネーム:梯子ダルマ)
お父ちゃん 兄ちゃん 聞いてほしいことがあるんだ
こんばんは井上公造です
芸能リポーターであるこの私にとって皆さんに真実真相を伝えることが使命であります
なので命をかけてあの問題の真実を私は調査しました。
そう、今世間を賑わせている……
いや、世界を揺るがす大戦争『トランプマン 対 米村でんじろう』
この大きな戦いの影で私は2つのスクープを手に入れました。
一つは『ミスターマリックの復活』。
皆さん覚えていますか?
以前まで人類の救世主と呼ばれていた彼はでんじろうの登場により国民から見放されたのです
プライドを踏みにじられた彼はもう
でんじろう側でも
トランプマン側でもない
第三勢力として戦いに参戦するでしょう
まさに現代の三国志です。
そして二つ目のスクープ、これが問題。
ここに一枚の写真があります。
見てください
“ファミレスで密談をする男性2人……”
そうこれは、明らかにトランプマンとでんじろうです。
最大の敵である2人がなぜ連絡を取り合っているのか?
私たち国民はもしかして大きな何かを見落としていたのかも知れません
このままでは恐ろしいことが起こります
そう
これは
この戦いは
初めから……彼ら2人の喧嘩(ウッ!)
おい!
なんだ!
誰だお前!
:
「ふ、ふじいあきら?」
:
おい!
何をする!
やめろ!やめろーー!
(ザーーーーー)
:
井上公造からのビデオレターはここで途切れていた。
彼は真実に踏み込みすぎたんだ
私は井上公造の意思を継ぎ、いつか必ずや真実を暴いてみせる。
見ててね公造さん……
以上、東海林のり子がお伝えしました
エピローグ(神奈川県ラジオネーム:梯子ダルマ)
お父ちゃん 兄ちゃん聞いてほしいことがあるんだ
久しぶりのメールで恥ずかしながら緊張しているよ
今 伝えたいことがあってね 笑わずに聞いてほしい
知ってるかな?
クリスマス。
そう、冬も深まり1年がそろそろ終わろうとしているこの時期、子どもたちは”アレ”を楽しみにしている。
初雪?
ケーキ?
さんまとSMAPの特番?
違う違う
そうじゃない
あれだよ
子どもたちが寝沈まった頃枕元にプレゼントを置いてく彼さ
もう分かったね
そう顔は真っ白に覆われ赤衣装に身を包むあのおじさん
:
トランプマンを子どもたち楽しみにしているんだ
イブの夜 ふじいあきらに鞭を打ち ソリを引かせトランプマンはやってくる
大量のトランプマンが世界中の子どもたちへ一斉にプレゼントを届けるんだ
……と、ここまでが子どもたち向けの話。
小学校高学年にもなるとみんな気づいちゃうんだよね。
トランプマンは本当は自分のお父さんなんだ
みんなのトランプマンは実はすごく近くにいたんだってことに。
でも
それは悪いことじゃない
決して騙すつもりはない
子どもの夢を壊さないようにみんなのお父さんは
トランプマンであることを隠してきたんだ
そういった意味では優しい優しい
本物のトランプマンなんだよ
そして、君たちもいつか家庭を持ってパパになる
そんな時、自分のお父さんを思い出して
君たちも立派なトランプマンを目指してほしい。
何代も…何代も……トランプマンを受け継いでいってほしい
忘れないで
人を思う気持がトランプマンを作るのさ
さあ 最後に一つ言わせてほしい。
「”加藤ミリヤ”の本名は”加藤美穂”って言うんだよ」
笑っちゃうね
ー 了 ー