若かりし頃の事件簿シリーズです。
21歳の頃でしょうか?仕事が激務でしてね、毎日朝8時位の電車に乗り、丸の内へ行き終電まで働く。先輩と2人で同じ寮だったので、帰りが一緒でしてね。
松坂君で有名な、横浜高校の近くの定食屋で夕食(と言っても0時過ぎ!)を取って帰るのが定番でした。
話は変わりましてね。僕は先輩達に可愛がられてまして、まぁ、なんでかっていうとなんでも屋だったんですよね。使い勝手が良かったんだと思います。
「明日までにこういうプログラム作って!」「よろこんで!」
「今日、合コンに欠員ができたから来て!」「よろこんで!」
「俺、あの子狙ってるから、他の人をブロックして!」「よろこんで!」
ってなもんです。
そして、もう一つ僕の特徴がありまして、先輩達の彼女からの信頼が抜群だったんですよ。先輩に彼女ができますと、なぜか僕の電話番号を彼女に教えるんですよ。僕は完全な安牌でしてね。
「波秋はチキンだから、女には手を出せない。」
「波秋は安心できる。」
と、言うわけで、スケープゴートに使われること多数。
月曜日に会社に行けば、先輩から「昨日、お前と飲んでた事になってるから。2人で。そのあとカラオケに行って帰ってるから終電で。」みたいに言われるんですよ。
その後、彼女さんから電話かかってきましてね、「昨日、先輩さんと飲んでました?」って来るんですよ。そしたら、話を合わせておくんです。
まぁ、便利屋ですよね。アリバイ屋と言うか。
まぁ、彼女さん連中も、「波秋さんなら大丈夫!」と言う絶対の信頼を僕に寄せていたんですね。
で、話を戻しまして、また激務の話です。終電で帰りましてね、いつもの店で先輩と夕食を取っていた訳です。いつもはチャーハンとかなんですが、珍しく「かた焼きそば」を注文しましてね、それが出来上がるまでの間です、僕の携帯に電話がかかりました。A先輩の彼女からです。
「しまった、A先輩からの事前情報は入っていない!」
恐る恐る電話に出ます。
「波秋さん、昨日A先輩と飲んでいました?」
たぶん、これは大丈夫だ。
「えぇ、飲みましたよー。」
次が問題でした。
「その時、その場に女の子いました?」
げげー!やばい、合コンって設定なのか?話入ってないから、これは嫉妬からの確認かな?
高速で、僕の頭が回転します。かた焼きそばはまだ出てきません。
よし!と覚悟を決めて、
「いえ、二人で飲んでましたよ。女の子居なかったです。」と言った訳です。
すると、「昨日、波秋さんと飲んだって聞いてないんですけれど…」
げげ、ブラフかけられた!!
「あ、え、その…」
「明日、A先輩に聞いてみます!」
しまったー!
先輩が僕の顔をみて、「どうした?」と声をかけようとしたときに出てきたのが、
かた焼きそば。
その後、それを食べながら先輩に説明。「うーん、やられたね。」とのんきな先輩。
勿論、かた焼きそばの味は一切しませんでした。
後日談ですが、A先輩はその彼女さんと無事ゴールイン。目黒雅叙園へと僕も招待された訳です。よかったーーー。