2012年2月29日(閏日)に、東京事変というバンドが解散した。
もともと、椎名林檎のパーマネントバンドとして発表されたこのバンド、1回のメンバーチェンジを行ったが、その後、実に良作の音楽を発表してくれた。
愛だの恋だの、夢だの希望なんかじゃない、音楽。
歌だけではなく、音を楽しませてくれる、音楽。そんなバンドだった。
東京事変は、もともと椎名林檎のライブ時のバンド体制で、「無名だけれど、素晴らしいミュージシャン」を率いて、お披露目するようなイメージであったと思う。第一期のメンバーは良くも悪くもバンドサウンドだったし、一枚だけ出した第一期時代のアルバムも聴くと”椎名林檎のバンド”だと分かる物であった。
メンバーチェンジをして発表した2ndアルバム”大人(アダルト)”は名前の通り、ジャズやカントリーの要素をいれた大人の音楽であった。バンドサウンドではない、大人のサウンド。
その後、色々なアルバムを出し、色々な曲を発表する訳であるが、僕は非常に楽しみだった。新譜が出る度にワクワクさせてくれるバンドなんて最近少ない。そんな中で、僕は東京事変の大ファンになっていた。
そして、気がつくと新しいアルバムになるにつれ、東京事変から”椎名林檎”色が消えていくのである。いや、逆に伊澤一葉、浮雲という個性的なメンバーは”椎名林檎”色に収まらず、個性を強調して、それは東京事変を強くしていく。
最後のアルバム「大発見」では、声を聞けば「椎名林檎だ。」と分かるが、逆に曲を聴けば、「これは浮雲だな。」とか「伊澤の曲だ。」とかを感じるようになる。
今や、椎名林檎の存在は、”東京事変のボーカル担当”と言う存在である。
僕はそれでもいいと思った。が、椎名林檎はまだまだやりたい事があり、それが「東京事変」のフォーマットでは出来なくなったんだろう。他のメンバーもそうだったかもしれない。伊澤一葉は”あっぱ”、浮雲は”ペトロールズ”と言う自分のバンドを持っている。
東京事変の当初の存在意義としては、この二人はすでに有名になりすぎた。解散するタイミングとしては、最後だったのかもしれない。このままでは、「椎名林檎不在の東京事変」が出来てしまうかもしれなかったのだ。(実際、「color bars」と言うミニアルバムでは、5人5様の曲を発表している。)
期は満ちていたのだ。
ただ、椎名林檎は戻る場所として、「東京事変」という”器”は残しておいても良かったのではないだろうか?メンバーは替わっても良い。ただ、戻る場所として、ファンの期待として。
椎名林檎は、今後も良作の音楽を発表していくだろう。
僕としては、東京事変が解散した今、伊澤一葉と浮雲の楽曲がもっと発表される事を望んでやまない。(実際に、第一期のKeyboardだった、H是都Mこと、H ZETT Mはソロとして作品を発表し、今もなお精力的に活動している。)
商業音楽ではない音楽、CDが売れなくなった今、音楽は音を楽しむ人達の物に戻ってきているのかも知れないし、そうなって欲しい物である。
BonVoyage!
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