はじめに
噂になっているので読んでみました。
この本、「はじめに」をきちんと理解した上で読む必要があります。
- この本ではFintechやビットコインなどの技術的なトレンドの紹介をしたいわけでもありません
- 人生の方向性に迷っている人に対する自己啓発本でもありません
- 「こうすれば仕事の効率が上がる!」といったライフハック的な本ではない
- 世の中はこう変わるといった未来予測を趣旨とした本ではない
上記のように書かれています。
この本は、お金と経済と言うものが今までどのようにして機能して来たのか?そして、今あるテクノロジーが”個人の価値”を可視化(数値化)出来る時代になって来ていると言う本です。
ピケティーは?
初めの方で”資産経済(お金がお金を生み出す)”としての投資の話があるのにピケティーの話が出てこないのが気になりましたね。数年前にピケティーが流行ったので、ピケティーに触れていても良かったと思います(「あぁ、ピケティーってこの事を言ってたのか」って感じで)。
お金は2.0ではない
あと、これは「ほにゃらら2.0」全般に言える事なんですけれど、2.0じゃないんですよね。発祥である「Web2.0」はWebと言うものの歴史が浅かったから言える事であって、お金に関しては2.0どころか色んなバージョンがあるんですよね。
例えば、日本は戦国時代に米をお金の代わり価値として評価していた時代がありますよね。
過去の歴史から”お金”のあり方を考えて行くと、お金4.0(ちょいと適当)位じゃないかなぁって思うんですよ。
なので、
- お金1.0:物々交換の代わり
- お金2.0:労働の対価としてのお金
- お金3.0:資産経済(株、為替)
- お金4.0:価値主義としてのお金(本書)
とかで簡単に書いて貰えればよりブレイクスルー感を得られたのではないか?と思います。
例えば、昔はドル円は360円で固定されていました。今は相場為替があるので、円安円高により企業は輸入輸出に対する売上額が変わります(為替リスク)
お金がお金を稼ぐ仕組みに関しては、昔から投資家や投機家という人達がいます。ここでもピケティーを引き合いに出した方が理解が深かったのではないでしょうか?
個人の価値が可視化できる時代
この本では「価値」について強く書かれています。
インターネットSNSの爆発的な普及によって会社外での自分、つまり”個”としての承認欲求を強く求めるよう、そして結果がついてくる(フォロワーやいいねの数)になっているのではと思います。
会社で部長とか事業部長とか上に上がる目的には給料が沢山貰いたいと言う点が大きいと思います。給料一緒で責任だけ増えるのならやってられないですからね。
この場合は”会社内で認められたい”と言う承認欲求であり、今まではそれしか”評価”はなかったのです。
今の時代は、大多数の人は全員が会社のピラミッドの上にはいけないのでSNSで書き込みをしフォロワーを増やし”会社外の個”としての承認欲求が満たせる時代になったと思います。
SNSの世界ではフォロワー数やイイネの数で人気を数値化(可視化)することがある程度は可能です。みんなが有名人になりたいと言う欲求。逆に言うといいねの数が増えるフォロワーが増えることによるドーパミンの上質快感に繋がっているのではないでしょうか?これがお金では買えないものになって来ます。
これは給与などお金とは別に働くインターネット等やSNSの世界だから生み出されたものかもしれないですね。
確かにこんなに簡単にお金を使わずに承認欲求を満たし対外的に数値化することにより他人にマウンティングを取る方法は昔はなかったのではないでしょうか?
そう言う意味では、お金持ちではない”個人の価値”ですね。
1億円あって人生(お金で買える範囲)を謳歌している世代の人がInstagramを初めてもフォロワーもいいねも増えません。
逆にバイト生活で生活はかつかつだけれども、TwitterやInstagramなどで主張や発言してフォロワーやいいねの数が爆発的に増えると言う生き方も欲求を満たす”快感”になっている訳です。これはお金では買えない。
経済というもの
共産主義(社会主義)と資本主義を比べた場合、世界経済が成長するには資本主義が1番良かったんです。
今、現在もそうです。
ただ次の時代、資本主義ではなく個々の力が新しいものを生み出し成長させていく時代に変わるのかもしれないです。そのような時代にも準備しておくようにと言うメッセージが読み取れました。
この本を正しく理解するにはこの本で、所々に出てくる”経済”と言う言葉がどう言うものなのか?どうあるべきかどうだったのかを文章の中から読み解く必要がある。
時折、読んでいて、この文節で書かれて居る”経済”と言う言葉はどの文脈にかかって居るのか?と思うことがあったので。
ちなみにWikipediaによると「社会が生産活動を調整するシステム、あるいはその生産活動を指す」とあります。
価値主義について
この本は「価値主義」の可能性について書かれていますが、問題点もあります。
簡単に言うと下記の2点です。
- 生まれたばかりの人には価値がついて居ない。
- 価値は生物(なまもの)である。時間が経てば劣っていく価値もある。
これもきちんと考えないといけない点ですね。
でも、これからは同じ興味を持つもの同士が価値を高めあい物を作る時代が来るかもしれません。
そう考えると現在の大量生産、大量消費の時代はもしかしたら終わるのかもしれませんね。
本書では”トークン”と言う言葉が出てきます。トークンを発行と言うとよくわからないかもしれませんが、「地元商店街だけで通用する金券を発行」するとでも言えば良いでしょうかね?
その程度で理解しておいて、あとで興味があれば詳しく調べるのも良いと思います。これは仮想通貨には必要な知識ですから。
民主化された経済圏
この本では「民主化された経済圏」と言うものが出てきます。簡単に言うと仲良しコミュニティーが分散化されコミュニティー同士でやりとりする事で生活すると言えば良いでしょうか?
ただ、そうすると、政治はどうなる?治安は?税金で働いていた分の仕事の賃金は?
そもそも、(例えば)日本と言う国は?法定通貨とは?
…疑問はたくさん湧きますが、この本ではそこまでは書かれていません。まぁ、この点について書き始めると終わりが無くなってしまうので…。
なので、この本は、今の技術やテクノロジーを元にした「僕(作者)の考えたお金のありかた」です。
この本をベースに良い点と悪い点を洗い出し議論してみるのも良いのではないでしょうか?
おわりに
物事を考え実行する場合には”仮説検証”と言うものがよく使われます。
ただし、この場合は検証が難しすぎます。だから、絵空事とも呼ばれたりするんですよね。
みんなが今の流れを持って議論していく事で、みんなが過ごしやすい生活が出来るようになるかもしれません。
まさにそれが価値主義の経済の民主化なのでしょうね。
昔、人間の価値は可視化できませんでした。会社とかで価値(能力)を判定する事は売上金額などで評価できましたが、世界で共通する”価値”の可視化は難しかったのです。
ただ、インターネットが普及した現在、SNSなどで個人の価値を可視化する事がある程度できるようになりました。この”価値”がお金とは別に経済にどう影響するか?と言う事の啓蒙図書だと思いました。
この本は、お金のあり方に対する議論の「課題図書」としては良いのかもしれませんね、そう思いました。
あと、この本の他の人のレビューをいくつか読んで見ましたが、
- これからは仮想通貨になるから仮想通貨を買いましょう!
- 個人の時代が来るから自己啓発セミナーに通いましょう!
と言った勘違いのレビュー(アフィリエイトやセミナーへの導線)がありました。残念ですね。
くそ真面目な事書いてしまいました。