はじめに
最近、ニュースなどで「スキルを持った技術者が不足している」と警鐘を鳴らしています。実際僕の職場(SE業界)でも、管理職が「とにかく人がいない。他のベンダーも同様だ」とこぼしているのであながちウソではなく、今僕たちが実際に危機に襲われているんだな、と思います。
さて、世の中では起業だ!ベンチャーだ!Webサービスだ!とITで起業をしようとする若者は多いですし、実際にそうやって起業してビジネスを行うのが可能な時代になっています。これは”インターネット”と”スマホ”と言う2大変革が世界的に起こったからだと僕は思っています。
今は2020年、例えば2000年に産まれた人は20歳になりますね。成人です。インターネットの爆発的な普及は日本では1995年なので、生まれながらにしてインターネットが当たり前の世界に生きているわけです。いわば、”デジタルネイチャー”
なのに、IT人材不足と言われているんです。若い人はスキルがあるのに…。
なぜ人(人と言うか人材)が足りないのか?
これ、何を言っているかと言うと簡単な話、30代後半から40代の所謂、多数の現場を経験て脂ののった状態の社員が不足しているって言う意味なんですよね。年齢帯として”管理者不足”とも取れるかもしれません。人員不足ではなくて人財不足。
なぜ、その世代がすっぽり抜けているのか?
答えは簡単、バブル崩壊後に就職氷河期が起こったからなんですよね。
僕は1993年入社、高卒でしたが倍率は2倍くらいだったと記憶します。半分は合格しなかった訳ですね。今思ってもよく合格したと思っています(ロクに勉強していなかったので)
ちなみに、この世代をロスジェネ世代と言います。
企業がバブルで負った損失を埋めるのに必死で、とてもじゃないけれど人を雇う余裕が無かったから求人を出さなかったからです。(人を雇うと言う事は企業にとって、最初の3年間は教育費として利益が出ない人たちを意味します)
僕は滑り込みで希望の会社に入れましたが、とにかく求人倍率が1倍を切っていたので「自分の希望の職種には入れないけれど、生きていくためにとにかく就職する」しかなかったんですよ。
ちなみに、ロスジェネの開始が1993年と仮定しますと、2020年現在、1993年に入社出来ていれば49歳(大学卒)、45歳(高卒)と言う年齢になります。
ここまでくれば簡単ですよね。
要は、今人材不足と言われている世代を、当時会社が採用しなかっただけです。ただ、それだけ。
もし、赤字になってもちゃんと毎年一定数の求人を出し、希望の職種につけるようにしておけばこのような問題は起きなかったんですよね。ただ、それだけ。簡単な事です。
抜けた穴はどうするか?
かと言って、今「ITスキルのある40代」を中途採用するのは難しいと思います。”ITスキル”だけなら机上の勉強で賄えるかもしれませんが、数々のプロジェクトを乗り越えた人材ではありません。結局、残念ながら現場に投入しても即戦力としては活躍はできません。
もしかしたら、”転職”と言う観点ではIT業界で今40代の人はチャンスかもしれません。が、遅い…遅すぎる。定年を60歳と考えると転職後に働けるのは10年ちょいだけ。
それも現場で働かせる(管理職としない)のであれば、それ相応の給与を保障しなければいけないですよね。これもリスクが大きいし、経験豊富な部下を持つ年下の上司としてはやりずらいのも事実。
池井戸潤さんの小説に「ロスジェネの逆襲」と言うタイトルの本がありますが、今、日本はロスジェネに逆襲されているのかもしれません。勿論、その”ロスジェネの人材”は存在しません。怨念です。ゴースト。
これは、その世代だけではなく、そのあとの世代にも影響を与えます。それは「適切なロールモデル(この人みたいになりたい!と思わせてくれる人)が存在しない」事です。
若い世代にも影響が…
普通、会社に入ると5年後、10年後の自分はどうなっているべきか?どうなっていたいか?と言う事を考えます。
その際に、「xxさんみたいになりたい」と言う人がいれば良いですね、その人をお手本(ロール)として仕事をして行けば良いのですから。
ただ、このロールモデルになる世代がスポっと抜けているんです。
そりゃー、仕事に生きがいを感じない、将来が見えないなんて意見が出てくるのももっともなお話だと思います。
残念ながらこのスポッと開いた穴は修復不可能です。20代の新人に「明日からお前は管理職としてプロジェクトマネージメントをしてくれ。絶対に赤字は出すなよ」と言うようなものです。
終わりに
と、ここまで書きましたが、僕はこれは逆にチャンスではないのかな?なんて思っています。
ロールモデルが10年間不在の日本。逆に自分のやりたいやり方で出来る。なにせ、終身雇用の年功序列の時代は終わってます。IT業界というのは比較的新しい産業です。
ここはミッシングリンク(繋がらない鎖)として、過去の考え方を全否定して、合理性(ある意味冷たいと感じるかもしれません)を追求した日本企業が生まれてくるかもしれません。
そうなって初めて「働き方改革」が実現するのかもしれません。
僕は44歳。もう人生半分過ぎました。
でも、若手に上司ズラするのではなくて、個を尊重し、そして支援していきたいです。僕たちロスジェネが出来る事といえば、愚痴をこぼすのではなく、自分たちは諦めて次の世代にバトンを渡す事なんだな、なんて思いました。